2010年03月15日

第3回「賢い人々は、『引きこもりには時間制限がある』と考えている(3)」

 前回の続きから行きましょう。

 こういう話をすると、「30代で職歴が無いのに実務経験なんてつけられるわけねえだろボケ!」のような意見が必ず来るのですが、それは全くその通りです。これまでにある程度の職務経験がある当事者なら可能性はありますが、バイトの経験すら無い当事者にとってそれは不可能です。幸い、私は複数の業界の会社経営者の方とお話をする機会に恵まれているため、就職現場でどのような人材が求められているのかは良く分かっていますが、今回の例のような当事者は、どんなに頑張っても鼻にも引っ掛けて貰えないでしょう。はっきり言えば、社会は彼らに対して「別に君は要らないよ」と断言してのです。例に挙げた当事者の社会的現状とは正にこんな感じです。


 では、そのような当時者はどうすれば良いのか?死ぬしかないのか?結論から言えば「条件付で何とかなる」というのが実情です。つまり、「きちんと学び直しさえすればそれなりに何とかなる」ということです。

 今もそうですが、各国の軍には「士官学校」というものがあります。これは、軍隊において指導的役割を担う将校を育成することが目的で、毎年高度な専門教育を受けたエリート軍人が輩出されています。一般に、彼ら士官学校出の軍人は、たたき上げの軍人と比較して遥かに出世が早く、下士官上がりの軍人の昇進が限定的である点を考えるとかなり優遇されています。

 因みに、このようなシステムは何も軍隊だけではなく、社会一般にも適用されている様子が見受けられます。今ではこのような表現も若干減りましたが、企業の幹部候補生である「総合職」が「一般職」と区別されていたのもこれに該当するでしょう。即ち、「士官学校出身」=「総合職」、「たたき上げ下士官」=「一般職」ということです。


 では、これを引きこもり当事者に当てはめるとどういうことになるのでしょうか?一言で言えば、引きこもり当時者には二通りの選択肢があると言えます。

 一つ目は一般社会における「士官学校」である大学等に進学し、高度な専門教育を受けた上で国家資格を取得し、社会の中で「将校」として生きていく選択肢。もう一つは、そのまま就職先を探し出し、現場の「兵卒」として生きていく選択肢です。大雑把に言えばこういうことになるでしょう。

「将校」としての生き方を選択する場合、長所は何といってもその「安定性」です。絶対的ではありませんが、高度な国家資格を有していれば資金面でショートする心配は大きく減りますし、将来的な見通しも立てやすくなります。また、概して高等教育を受けている人々の方が温和な性格をしている傾向にあるので、生活のしやすさは「兵卒」の比ではありません。昔から新兵イビリをするのは下士官の役目ですが、これは一般社会にも言えることでしょう。一方で、教育のためにまとまった資金が必要になるのと、教育のためにある程度の助走期間が必要となるのがネックです。

「兵卒」としての生き方を選択する場合、資金を獲得するまでの期間は短くなりますし、取り立てて必要な経費もありませんが、とにかく生活が不安定で、人間関係も熾烈であることが一般的です。特に熾烈な人間関係は引きこもり当事者にとってダメージが大きく、改善を阻む致命的要因となっています。「脱ヒキしたけどブラック企業しか行くところが無かった。結局また引きこもった」なんて話はこれに該当します。(もっとも、ブラックでも何でも就ければまだ良いのですが。)


 以上のことを踏まえた上で、次回はそれぞれの選択肢を選んだ当事者がどのようになっているのか見てみましょう。 
posted by Ecodog at 00:59| Comment(0) | 脱ヒキの要点(当事者編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第2回「賢い人々は、『引きこもりには時間制限がある』と考えている(2)」

 前回の続きに行きましょう。

 それならば、30代に入ったらもう手遅れなのでしょうか?結論から言うと、必ずしもそうではありません。今回の例では全く仕事の経験が無く、引きこもり期間も長いなど踏んだり蹴ったりの状況でした。しかし、同じ「引きこもり」でも、きちんと学んでいながら、就職氷河期の影響を受けて引きこもってしまった人や、20台後半から引きこもってしまったような例も普通にあります。「30代だから全てダメ!」というわけではありません。

 また、あくまで「30代がデッドライン」なのであって、30代はまだギリギリ何とかなるボーダーライン上です。支援現場の感覚としては、「20は余裕、30ジリ貧、40以降はほぼ不可能」というのが実情ですから、条件付ではあるものの、30代はそれなりに見込みあり、と考えておいた方が良いでしょう。

 では、同じ30代でもダメになる層とそうでない層とは何が違うのでしょうか?結論は単純で、「社会で生き残るための必要な学びを行ってきたか否か」ただそれだけです。具体的には国家資格の取得や、実務経験などのことです。それがあれば30代でも普通にやり直しは可能ですし、落ち込む必要もありません。非常にプラクティカルなお話です。

 しかし、今回挙げた例のような当事者の場合、この「生き残る力」が全くありません。そのため、社会に出てもロクな仕事には就けませんし、ジリ貧は確定的です。希望も何も持てない状況と言えるでしょう。


 ただ、ここで注意して欲しい点が一つ。「生き残るための力が無いことが問題ならば、逆に言えば、それさえあれば何も問題は無いのではないか?」そう考えることも出来るのではないでしょうか?そうです。これは全くその通りで、賢い引きこもり当事者の姿勢とは須らくこのようにできています。つまり、「今無いのならば、自分で生み出せば良いじゃない」という建設的発想です。幸い、今という時代は色々と混乱に拍車がかかっていますから、実力さえあれば多少の遅れは問題になりません。この点も今の当事者にとっては大きな追い風となっています。

 結果、このような発想を淡々と構築出来る賢い当事者は少しずつ具体的行動に移り始めます。この第一歩が踏み出せるか否かで、その後の状況が正反対となることは忘れないようにしましょう。今回の要点はこの部分、即ち「無いなら作れ」です。
posted by Ecodog at 00:00| Comment(0) | 脱ヒキの要点(当事者編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月14日

第1回「賢い人々は、『引きこもりには時間制限がある』と考えている(1)」

 さて、早速始まりました「賢い引きこもり当事者の生き様を見てみようブログ(?)」こと「脱ヒキの要点」第一回目です。初っ端からシビアなお話ですが、今回は「年齢」について取り上げてみましょう。

 引きこもりの対応限界については色々と言われているかと思いますが、現場感覚的に見たところ、引きこもり解決の限界点は30代というのが現実的でしょう。これについてはいくつか理由がありますので、具体的にその理由を列挙していきましょう。

 尚、ここではある程度よく見かける引きこもりのケース、即ち、

○高校中退、或いは進学経験無し
○資格・職歴なし
○家庭は微妙に破綻気味
○引きこもり期間は5年〜10年
○何とかしないとマズイが、どうすることも出来ない状況

のような当事者を前提としてお話して行こうと思います。


 一つ目はズバリ「資金的な問題」です。引きこもりは、短期的な場合(3年以下)ならば自力でもそこそこ改善可能なのですが、それを突破すると自力改善は著しく困難となります。これは、対人関係に目に見えた支障が出てくるのと同時に、社会との距離感が事実上崩壊してしまい、適度な間の取り方が分からなくなるためです。

 そのため、3年以上の引きこもりのケースに対しては、実効性のある支援を受ける必要性が出てきますが、多くの場合実効性のある支援は有料であることが多く、その資金を拠出出来ない場合、改善の可能性は大きく低下します。

 ここで課題となるのは親の年齢です。基本的に引きこもり当事者が潤沢な資金を持っている事例はほぼゼロですので、改善のための費用は親が負担することになるのですが、引きこもり当事者が30代になる頃には親も定年退職を向かえ、資金的余力が段階的に失われていきます。また、親の高齢化と共に医療費の負担額が増加するなど、キャッシュ・フローは着実に悪化の一途を辿ります。即ち、「引きこもりへの金など出せなくなる」ということです。

 以上のような状態は事実上の「タイム・オーバー」と言えるでしょう。長期の引きこもりの結果30代を越え、親の資金も無くなれば改善の可能性は限りなくゼロとなります。この点だけはくれぐれも留意しておきましょう。既に限界点を突破してどうにもならなくなった人々は大勢いますので。

 そのため、破綻する未来を読み取れる賢い当事者は、親の資金がゼロになる前に着実に行動に移します。どのような行動をするかはこれから紹介することにしますが、取りあえず今は「きちんと引きこもりを改善し、淡々と社会に出られる賢い人は、常に少しずつ動いている」という事実だけ知っておいて下さい。

 今回はここまでにしておいて、次回はこの続き、第二回「賢い人々は、『引きこもりには時間制限がある』と考えている(2)」をお送りします。

 
posted by Ecodog at 23:28| Comment(0) | 脱ヒキの要点(当事者編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする